※このシリーズは3部構成です
▼1日目:最初の敗北と、静かな闘志の芽生え
遡ること数日前の朝。
私は地元のミスタードーナツの前に、開店45分前から並んでいた。
お目当ては、新作ドーナツの**「もっちゅりん」**。
“ポン・デ・リング×団子”といった感じで、あずき・きなこ・わらび餅・みたらしという和風の味付けが特徴だ。
なかでも、私はまだ一度も食べられていない「わらび餅味」を狙っていた。
家族とスイーツの小さな習慣
我が家では、甘いものはささやかな楽しみ。
ミスドの新作が出ると、家族で味見するのが恒例行事になっている。
ある日、妻が買ってきてくれたもっちゅりん。
家族であずきやきなこを楽しむ中、「わらび餅味」だけが売り切れだった。
「まぁ、また今度でいいか」と思っていた矢先、妻からの一言。
「この前食べられなかった“わらび餅”、もう一度チャレンジしてみたいな…」
その言葉が、静かな闘志に火をつけた。
▼2日目:初動の失敗と、小さな作戦変更
一度目の再チャレンジ、しかし…
開店に合わせて再び店に向かう。
だが、ショーケースは空っぽ。
店員の一言が胸に刺さる。
「本日分は開店5分で完売しました」
……こんなにも人気なのか。
「買えそうで買えない」──その事実が、さらに欲望を加速させた。
サクランボと宅配便、そして救世主
次の日、決戦の朝。
だが、その日は妻の実家からサクランボが届く日。
私は「今日は無理かも」と諦めかけたが、ある存在に気づく。
「長男が今日、家にいる…!」
宅配便の受け取りを長男に託し、私は急いでミスドへ向かった。
▼決戦直前、列の中で感じた“連帯感”
午前8時50分、すでに10人ほどの列。
開店10分前に並んだ私は、「わらび餅味は残っているのか」と心の中で祈っていた。
そして、無情のアナウンス
開店と同時に店内へ入る人たち。
だが、先頭の中年女性2人のトレイに、わらび餅味のもっちゅりんが山積みされていた。
そして無慈悲な一言が響く。
「本日分のもっちゅりん・わらび餅は、ただいま完売となりました」
何も買わずに帰宅。
妻に報告すると、怒りと驚きが入り混じった表情を浮かべていた。
▼これはもう“ただの買い物”ではない
2日連続の敗北。
もはや目的は、スイーツではない。
それはちょっとした意地、執念のようなものだった。
▶次回予告|【中編】執念の3日目と早朝の再会
執念の3日目――その列で偶然再会したのは、かつての“同期”だった。
果たして「もっちゅりん・わらび餅」は手に入るのか?
そして、朝の静かな戦いの中で交わされた言葉とは。
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